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2023年1月からのドラマ
フジテレビ「女神(テミス)の教室~リーガル青春白書~」
第1話の感想。
まずはこのドラマを見る前に、
「〇〇の教室」という題名から
あるドラマを思い起こした。
天海祐希主演「女王の教室」
このドラマはとても秀逸だった。
題名が似ているというだけで
勝手に期待して見ていたのだけど、
第一話からしてとてもよかった。
今の世の中、事務的に効率ばかりを求めて
大事な部分が欠如しているということが
沢山あると思う。
そんななかで、泣く人もいるでしょう。
よく言われるのが、
日本の刑事裁判の有罪率99.9%。
疑われたら、たとえ間違っていたとしても
有罪になってしまう。
恐ろしいことですよね。
効率ばかりを求めていては
大事なものを見落としてしまうこともある。
それを指摘し、考えさせてくれるドラマです。
女神(テミス)の教室、第1話のあらすじ
柊木雫(北川景子)は東京地方裁判所の裁判官。
ひとつの案件を丁寧に進めていることで
数をこなせておらず、所長の砂川からは
効率が悪いと指摘されていた。
そんな折に、青南大学法科大学院の派遣教員
として専任で勤務することを命じられる。
青南大学法科大学院は通称
青南ロースクールと呼ばれており、
年齢や学歴を問わず、誰でも通うことが
でき、司法試験の受験資格を得られる場所。
雫は初日から、学生たちに実務を交えた
講義をしようと熱心に取り組むのだが、
学生たちは効率が悪いと反発する。
雫は学生たちが法律家になるにあたって
実務を知ることが大切だと考えているのだが
当の学生たちは司法試験に合格することしか
頭にないため、試験対策以外は無駄だとして
効率ばかりを求めているのだ。
それはこの青南ロースクールの人気講師、
藍井仁(山田裕貴)の影響が大きい。
藍井ゼミは通称、藍井塾と呼ばれている。
雫と藍井は、方針の違いから相容れないが
学院長である守宮清正(及川光博)は
二人で実務演習をするように持ちかける。
実務演習では模擬裁判を行う。
藍井が検察側で、雫は弁護側を受け持つ
ことになった。
藍井側は事務的に淡々と準備をし、
雫側は学生たちにひたすら考えるように促す。
そして模擬裁判当日。
通常通りといった流れで行う藍井側に対し、
弁護側は想定を超える行動を起こしてきた。
被告人役が証言を覆したのだ。
さて、ここから先はあらすじもネタバレ
するので、感想とともに書いていきます。
苦手な方はお気をつけくださいな。
女神(テミス)の教室、第1話の感想
全体的によくできていて、物語にも
すんなり入れて共感もできる優良ドラマ。
ここからはまず、主な人物についての感想を。
そして物語のオチは最後に書くことにします。
主人公の柊木雫(北川景子)
主人公の柊木雫(北川景子)は、
何があってもよくご飯を食べる。
とんかつをもりもり食べている姿は
とても好感が持てる。
公園の噴水際で仰向けになって寝るとか
なかなか普通できないことを
堂々とやってくれるのも頼もしい。
こういう人、大好きです。(告白かよ)
雫は教員としての勤務の初日、
通勤バスの中でテストの答案用紙に
事細かく赤ペンを入れていることから、
勤勉で熱心な人物であることが伺える。
学生の手厳しい指摘や態度にもめげず、
雫はずっとニコニコしている。
このニコニコは
よくある取り繕いのニコニコではなく、
心からニコニコしているように見える。
なんだか初日でウキウキしているようで、
まったくポジディブな人のよう。
雫の仕草ひとつひとつが
柊木雫ってこんな人なんだと伺えるほどで、
北川景子さんの演技力にはやはり
すごいものがある。
雫とは正反対の藍井仁(山田裕貴)
藍井(あおい)仁は憲法の研究者。
東大法学部時代に1年生で予備試験を突破し
2年生で司法試験に合格したという…
雫いわく、「化け物じゃん」という人物。
おそらく現場を知らない机上の天才。
早口で抑揚のない、もそもそとした話し方。
この人の声を長時間聞いていると
よく寝れそうですが…
講義中、藍井の問には即答しないと
怒鳴られるので、
学生たちは神経を尖らせてピリピリ。
凡人は容赦なく切り捨てていく。
藍井仁役の山田裕貴さん、
そのセリフの量に圧巻です。
しかも、もそもそと話しているのに、
すごくよく聞き取れるのすごい。
私はもそもそ話されると聞き取れないので
とても助かります。
聞き取れない俳優さんは決まっているので、
声質なんかもあるのかなぁ。
(もしくはやはり喋り方…滑舌なのか)
学院長の守宮清正(及川光博)
まるで真逆で反りが合わない雫と藍井。
この2人の言い合いを
けっこうなニコニコ顔で笑って見ている
学院長の守宮清正(及川光博)は、
この状況をどうやら面白がっている様子。
おそらくこの2人を突き合わせて
何かしらの相乗効果を得ようと
企んでいるに違いない。
学長ミッチー、いい味出してます。
模擬裁判について学生に知らせるときに、
模擬裁判は構内で生配信されることや
大勢が見ていることなどを伝え、
学生に満面の笑みですんごいプレッシャーを
与えて去る学院長。
やっぱ憎めないキャラなのです。
これ、なんだっけ?
雫は学生時代の同期二人と
グループLINEをやっているようで、
事あるごとに「出廷!」と持ちかけて
集まっている様子。
この招集の流れ、どっかで見たような…。
「タラレバ」だっけ?なんだっけ?
ちょっと気になるので思い出したい
ただの余談です。
学生、田辺の悲喜
司法試験を受けられるのは5回だけ。
学生の田辺浩(田村健太郎)は藍井に対し、
もう後がないからと藍井塾への入塾を
懇願し泣きついていた。
藍井に断られると、
じゃあ自分はどうしたら受かるのか、と…
田辺に歳(30歳)を聞いた藍井は、
もっと早く諦めるべきだったと切り捨てた。
後が無いからすがりたい気持ちもわかるの
だが、同じように不安と焦りの中で
努力をしている他の生徒を無視して、
後がないから自分を入れてくれというのは
どうにも虫がいい。
…にしても、藍井の切り捨て方は辛辣。
しかし東大2年生で司法試験に合格した
藍井からすれば、逆に受からない人の
気持など理解できないのは当然のこと
なのかもしれない。
あるいは田辺が他力本願に見えたからこそ
厳しく切り捨てたのかも…?
なんて、これは考えすぎか。
この学生は絶望的に見えたんだけど、
模擬裁判を見た後には何かを掴めたようで
とても晴れやかな顔をしていた。
何気ないちょっとしたシーンなんだけど、
こういう救いのあるドラマはいい。
見ているこちらまで嬉しくなってくる。
痒いところに手が届くような、
行き届いた感がある。
模擬裁判の経緯と結果は
構内中が見守る模擬裁判は、
いきなり予定調和が覆る。
被告人X役の天野向日葵(川村花)が
罪状を否定したのだ。
現場にいる講師陣や学生、
モニター越しに見ている学生までが
突然のことに呆れ、弁護側を馬鹿にする。
そんな状況をモニター越しにニコニコと
見守っているのは学院長くらいのもので…
こうなることを狙っていたのだろう、
大変ご満悦の様子。
この展開はとても見ていて面白かった。
決められた通りに進めるのではなく、
自分の頭で考え、可能性を突き詰めた結果
新たな仮説を主張した弁護側の学生たち。
雫によれば、証言が覆されたり
事実認定が変わることはよくあること
なのだという。
現場を知っているからこそ
言えることであり、教えられること。
こういうのが生きた教育なのだろうね。
決まりきったものごとを詰め込むだけでは
逸脱したことに対応できない。
藍井はよくもわるくも、
おそらく現場を知らない。
現場で生きてきた雫とは
まったく見地が異なる。
被告人X役は学生が演じているし、
判例の資料しかないわけで…
根底から覆してしまうと、あとは弁護側の
学生たちの想像、創作でしかない。
この模擬裁判はどこへ向かうのか、
罪を犯していないことをどう立証するのか…
などなど、見ていてちょっとハラハラした。
藍井から、そこまでして勝ちたいのかと
批判される雫は、少しも悪びれることなく
堂々としている。
雫は「弁護側は合理的な疑いを主張し、
これを立証する責任は検察側にある」と
現役裁判官の貫禄を見せ、
この発言に誰も否定することはできない。
藍井がしびれを切らし、
「本筋とは関係ない些末な事実を拾わせて、
学生たちにこんなことをやらせて
なんの意味があるのか」と雫に問うたのだが
これに反論したのは、
被告人X役の学生、天野向日葵だった。
被告人X役を演じる天野は、
「その些末な事実で被告人の一生が決まる」
「そんなんで、一人の女性の人生を決めてしまっていいのか」
と訴えた。
被告人Xの心情を考え続けた彼女だから
言えたこと。
何度見返してみても泣けてくる。
全くそのとおりだとしか言いようがないし、
残された証拠と調書、それがすべてである
なんて言えるはずがない。
調書も必ず第三者を介するものだから、
書いた人の先入観などがどこかしらに入る。
それが間違ったものであれば、それを読み
受け取った側も間違った認識になる。
そんなもので人の人生が決まってしまう
なんて、本当にこわいことだと思う。
そして被告人Xについての判決は、無罪。
理由は「疑わしきは罰せず」
その後の野外授業
模擬裁判終了後、雫は学生たちを連れ出し、
雫の学生時代の同期である
弁護士の安藤麻里絵(佐藤仁美)の元に
やってきた。
そこで学生たちは、学生たちの立会を
許可してくれた一人の老女と会う。
彼女は安藤が担当している案件の被疑者で
万引きをした罪に問われている。
本人の言い分を聞くと、
学生たちはみな同情し、なんとか助けて
あげられないものかと言う。
しかし安藤が言うには、さきほどの被疑者の
発言はすべて嘘だという。
そして、このようなことは日常茶飯事だと。
人は自分を守るためなら何でもすると。
それでも弁護士は彼らに寄り添い、
向き合わなければならないのだと。
また、それが法に携わる者の責任であり、
やり甲斐なのだとも。
純粋に目の前の人の話を聞いて、それが全て
嘘だと知らされるのはショックですよね。
しかも仕事柄、それを見誤ると振り回される。
学生たちは現実を知ることでどう思うのか。
こういった面を含めて考えてみると、
藍井にはやはり向かない職業に見える。
裁判官・検察官・弁護士、どれを取ってもだ。
…というか、自分に何かあったとき、
藍井のように効率しか求めない人に
自分の身の振りを握られるのは御免被りたい。
学生たちの思い違いと視点の違い
柊木雫は裁判官なので、学生たちは
雫のことをエリートだと思っていた。
そんな思い込みもあり、自分たちとは
はじめから能力が違うのだと苛ついていた。
しかし雫もまた、この青南ロースクールの
出身であることを告げ、成績がよくもない
ただの学生であったと言う。
そして雫は学生たちに、
事案とともに、そこには必ず人が居る、
そう思うことで見え方が変わる
と説くのだった。
ものの見方って人それぞれだけど、
どの目線でどう見るのかによって
全く見え方が変わってくる。
ただの文字の塊、文字の羅列ではなく、
その中に人が息づいているとするならば
そこに何があるのか。
そう思いながら文字を見てみると
すんなり頭に入ることもあるものだ。
何にしてもそうなんだけど、
ちょっとした視点や見方の違いで
ものごとは善にもなり悪にもなる。
このドラマは全体を通して、
そんなことを考えさせられるものでした。
今後も引き続き見ていきたいですね。
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